日本代表のシステムに影響を与える平山の偉大さ スポーツナビ 2006/10/26

反町ジャパンが抱えるジレンマ
U-21日本代表対U-21中国代表 2006年10月26日 (文= 渡邊浩司 )  

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日本―中国 後半、ゴールを決め投げキッスをして喜ぶ平山=国立競技場【 共同 】


「普通ですよ、普通。悪くもないけど、スーパーでもない。神戸との練習試合よりは良くなったけど」
 10月18日に行われた大宮との練習試合の後、平山の出来を問われた反町監督は、苦笑いを見せながらこう答えた。
 「良かったか?」と聞かれて「悪くない」と答えた指揮官の心の内は、文字通り“悪く”はないが、満足はしていないということなのだろう。反町監督の表情からは、その期待の大きさからか、平山の出来に対して不満の色がにじみ出ていた。

■平山を加え、ベストメンバーで中国と再戦

 10月25日、北京五輪を目指すU-21日本代表は、国立競技場でU-21中国代表との親善試合を戦った。
 中国との試合はこれで2度目。前回は8月に中国の秦皇島で戦い、本田圭と増田のゴールで日本が2-0で勝利している。この試合には、同時期に行われたA3のために千葉とG大阪の選手がメンバーから外れ、中国は大連実徳の選手が参加できなった(DFのリウ・ユーだけは参加)。両チーム共にベストメンバーで臨む今回の試合は、お互いの本当の力を試す絶好の機会となった。

 前回のメンバーと一番異なる点は、平山相太が加わったことだ。8月にオランダのヘラクレスを退団し、シーズン途中からJ1のFC東京に加入した平山は、9月20日に行われた大阪合宿で久しぶりにU-21代表に招集された。だが、神戸との練習試合では60分間プレーして無得点。2度目の招集となった埼玉合宿での大宮戦でも、60分間プレーして見せ場はCKから放ったヘディングシュート1本のみ。スピーディーな日本のサッカーへの順応、またコンディション調整の両面で、遅れを取っていることは明らかだった。

 対する中国は、先のワールドカップ・ドイツ大会でガーナをベスト16に導いたドゥイコビッチ氏を監督に招聘(しょうへい)し、2008年に地元で行われる北京五輪に向けて強化体制が整った。ただし、ドゥイコビッチ監督は就任したばかりということもあり、この日は選手の見極めに徹し、ジャ・シュクアン(賈秀全)コーチが指揮を執った。

 A代表経験者を多くそろえてホームでの雪辱を期する中国に、平山を加えた日本がどんな戦いを見せるのか。反町ジャパンの国内初戦は、2万1190人の観衆が見詰める中、キックオフを迎えた。

■中国相手に2連勝

 日本は、平山を1トップにして、増田と苔口をシャドーストライカーとして配置する3-6-1の布陣。最終ラインの中央には、8月の中国戦に続き、ボランチが本職の伊野波が入った。

 中国での試合では、試合開始から怒とうの攻撃を仕掛けてきた中国だったが、この試合では移動による疲れのせいか、「前回と違って最初の勢いがなかった」(本田圭)。だが、「最初の10分から15分は『このゲームはどうなるんだ』という感じがしていました」(反町監督)という言葉どおり、日本も序盤はゲームにフィットしていなかった。しかし、15分あたりで一度ボールをつないで落ち着くことができた日本は、前線からのプレスが機能し始め、徐々にゲームを支配するようになった。

 17分、相手CKのクリアボールを、苔口がコントロールし、左サイドにフリーで走り込む増田へサイドチェンジのパスを通す。増田は右足に持ち替えてから、中央にクロス。これを平山の後ろに走り込んでいた梶山が頭で合わせ、日本が先制に成功した。このとき、中国のペナルティーエリア内には平山、梶山、本田圭、中村の4人が走り込んでおり、チーム全員が連動した素早い攻守の切り替えから生まれた素晴らしい得点だった。
 その後も日本は、本田圭のループシュート、青山敏のシュートなどでチャンスを作ったが、追加点を奪うことができずに1-0のまま後半に突入した。

 後半、中国はフレッシュな選手を多く投入して盛り返してきたが、日本は伊野波を中心としたDF陣と中盤の選手の素早いプレスで、中国の攻撃を食い止める。そして、中国が長身選手を投入してパワープレーに出始めた後半37分、中村からのアーリークロスを平山が相手GKと競り、GKがクリアし切れなかったボールが平山に当たって中国ゴールに転がり込むという形で追加点が生まれた。日本は2-0とリードを広げ、中国にはあきらめの色が漂い出した。
 終盤になると、日本は中国の反撃に遭ったが、守備陣が集中力を切らすことなく対応し、見事に完封に成功。日本が2-0で勝利し、強豪中国を相手にホームとアウエーで2連勝を飾った。

■平山起用の弊害

 よくも悪くもメディアからの注目を集める平山だが、この試合の出来は、ここ最近の試合では一番良かったといえる。長身選手がそろう中国を相手に空中戦では完全に勝っていたし、ディフェンスラインからのロングボールも、平山が競ることでマイボールにすることができた。また、JリーグでのG大阪戦や大宮との練習試合よりは、プレーに絡む機会も増え、前線でボールをキープして、苔口、増田の2シャドーの飛び出しを促すプレーも見られた。

 この日は平山の長所が生かされたが、同時に、平山の起用にはデメリットも内含していることが見えてきた試合となった。
 そもそも反町ジャパンは、オシム監督率いるA代表と同様に「ボールを奪ってからの速い攻撃」を志向している。そのため、プレスを掛けてマイボールにし、前線にスペースがある場合は、速いカウンターを仕掛ける。だが、平山は日本のスピーディーなサッカーにまだ順応できておらず、カウンターにもなかなか効果的に絡むことができない。
 大宮との練習試合でこんなシーンがあった。家長がカウンターを仕掛けた際、平山は前線のスペースに走り込まずに、サイドに開いて足元でボールを受けようとした。しかし、家長は平山ではなく、前線に走り込む前田にロングパスを出し、結局ボールは相手DFにカットされた。
 この場面、もし平山が足元ではなく、スペースに走り込む動きをしていたら、パスコースが2つになり、より大きなチャンスになっていただろう。スペースへの走り込みが少ない平山は、カウンターの場面でチームの足かせとなる危険性があるのだ。

 この日、試合後の会見で反町監督は「ワンタッチで前線に入ったときに、彼(平山)が感じていなくて相手にインターセプトされる部分が多い。(中略)日本のサッカーは、非常に中盤のプレッシャーが速くて、ワンタッチでくさびのパスを入れるシーンが増えている。その時のタイミングでアーリーヒットしてボールをもらうところを感じることができれば、チームのリズムができると思う」と語っている。
 苔口、増田の2シャドーが平山を近くでフォローしていたことで、この試合では平山が孤立する場面は少なかったが、複数の選手が連動したパスワークや素早い攻守の切り替えで攻撃した場合には、平山が周りのリズムについていけないことがあった。

 また、平山はもともと運動量が多いタイプではない。この日は普段と比べれば動いていたが、前線でのチェイシングはするものの、相手を追いかけるスピードやボール奪取の気迫には欠ける。同じく高さを武器にしているA代表のFW巻が、精力的に前線からの守備を行うのとは対照的だ。

■ビルドアップに問題を抱える日本

 平山のFW起用に際しては、ビルドアップにも注意が必要となる。これは平山ではなく周囲の問題でもあるのだが、高さのある平山が前線にいることで、ロングボールが増えてしまうのだ。
 反町監督はメンバー発表の会見で、「後ろからのビルドアップにU-21代表は大きな問題を抱えている」と語ったが、この日もこの欠点は改善されることはなかった。

 増田が試合後に非常に的を射たコメントをしている。
「ビルドアップについては、手ごたえはあまりない。DFが苦しくなったら、平山にロングボールを入れるシーンがあった。中国相手だと平山が勝つからいいけれど、相手がもっと強い国だったら、そこでサッカーが終わってしまう」

 アジアレベルであれば、平山は相手に競り勝つであろうから、後ろからロングボールを入れる攻撃も効果的だろう。だが、世界の強豪を相手にした場合、さすがの平山でもそうそう勝てなくなる。平山の高さだけに頼って日ごろから攻撃を組み立てているようだと、格上相手にはたちまち攻め手がなくなってしまう。増田はそれを危惧(きぐ)しているのだ。平山が高さで勝ってしまうことが、皮肉にもビルドアップの改善を妨げてしまっている。

 反町ジャパンが目指すサッカーを実現するためには、平山の起用が障害となり得る危険性をはらんでいる。とはいえ、これらのデメリットは平山の能力というよりは、むしろ彼のプレースタイルとチームの方向性のズレから来ているといえるだろう。
 反町監督は今回の試合前日に、高さのある平山が加わったとしても、チームの戦い方は変わらないという主旨のコメントをしている。反町ジャパンがプレーの方向性を現在のまま変えないのであれば、いずれはこの“ズレ”が大きな問題として浮かび上がってくるだろう。

■平山をいかにチームに組み込むか

 もちろん、平山がいることによるプラス面も数多くある。世界に通用する高さは大きな武器であるし、懐の深いポストプレーもほかの選手にはないものだ。そこから2列目の選手が飛び出すことも可能になる。
 また、「1点目のクロスは平山を狙ったけれど、カジ(梶山)がうまく飛び込んでくれた。平山がいるのは、ほかの選手がフリーになるという意味もある」と増田が言うように、高さのある平山にマークが集中し、ほかの選手が裏を取れるというメリットもある。

 今後のチーム作りにおいては、平山をどう生かすかがポイントとなる。反町監督はメンバー発表の席で、今年は選手の見極めに主眼を置いていることを明らかにしている。アジア大会のメンバーに選ばれていることからも、反町監督はおそらく今年いっぱいは、平山を起用し続けていくだろう。
 当初は、年内の招集は予定されていなかった平山だが、オランダから帰国したことで、想定していたよりも早い段階でチームに合流することができた。早期にこうした課題と向き合うことができたのは、むしろよかったととらえるべきだろう。今後、平山がより運動量を増やして自らのプレースタイルを変え、日本の目指すサッカーに適応するのか。それとも、反町監督が平山を生かすために、チームの方向性に微調整を加えるのか。
 平山相太という大きなジレンマ。反町監督はこれをどう解消していくのだろうか。

サッカー批評 (Issue31(2006))

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